2024.01.12

経営

歯科医院の物販で大切なこととは?|物販のプロフェッショナル中原維浩先生インタビュー(前編)

歯科医師経営において「物販」というものは決して無視することのできないものです。月の売り上げが100万円を超えるような医院もあれば、10万円も売れないような医院もあります。

「置いている商品が悪いから?」「売り方が良くないから?」その差はどこにあるのでしょうか?「そもそもどうやって売ったらいいかわからない」という方もいるかもしれません。

今回そんな多くの歯科医院が抱えている「物販」の悩みを、600医院以上の物販の現場を見てきた物販のスペシャリスト、医療法人社団栄昂会 理事長 中原維浩(まさひろ)先生にぶつけ、医療物販のノウハウやテクニック、医療経営のヒントを伺ってきました。

目次

  1. 物販はコミュニケーションツール
  2. 予防先進国と日本のメンテナンスの違い
  3. 商品の選定「自分は物販で何がしたいのか?」
  4. 自分の医院のカラーを理解しているのか?

1.物販はコミュニケーションツール

-歯科医院経営において物販は切っても切れない大切なものだと思いますが、中原先生はこの「物販」というものを医院経営においてどのようなものと位置付けていますか?

中原維浩先生(以下:中原):常々「物販はコミュニケーションツール」という言い方をしています。自分で7年前に医院理念を書いたんですが、そのときに「食」というものをテーマに医院を始めました。最後まで自分の口の中で食べることをこの医院の命題としたんですね。そうした時に我々歯科の一番の改善策、治療法になるのが生活習慣を変えるというところだったんですが、結局のところ、それって食も含めて全部セルフケアだなっていうことに気づいたんですね。

例えば食をサポートするサプリメントみたいなものもあるし、あとは生活習慣を変えられないんだったら腸内環境だけでも変えられるようなものもあります。そういったいろんなツールがある中で、デンタルグッズのようなアイテムは我々歯科医と患者さんを繋ぐコミュニケーションツールであり、歯医者に興味を持ってもらうきっかけにもなりやすいなというふうに思いまして物販に力をいれるようになりました。

-先生が出されていた本の中でも同じ言葉がありました。また「物販というツールを通して患者のデンタルIQが上がれば自費診療のハードルが下がる」ともあったのが印象的でした。いつからそのような考えを持っていたんでしょうか?

中原:そうですね私自身、勤務医を7年経験したんですが、最初の頃は1ミリも歯ブラシに詳しくなかったんですよね。ただ、歯科医師になって3年目のときに、スウェーデンに勉強に行く機会があったんです。スウェーデンは世界で見ても、口の中の健康状態が良い国というふうに言われているんですが、何がそんなに良いのかと思っていました。歯科医師が素晴らしいのか、歯科衛生士が素晴らしいのだろうか、といろいろ見て考えたんですが、結論で言うと、歯科医師や衛生士は日本の方が素晴らしいと僕は思いました。では何が素晴らしいかというと、国の制度と、あとスウェーデン人全体のデンタルIQの高さ、これがすごいなと思ったんですね。

2.予防先進国と日本のメンテナンスの違い

-具体的にどんなところが違ったのでしょうか?

中原:それは実際に向こうのクリニックを見学をさせていただいたときに違いを感じたことなんですが、例えば日本でも歯のメンテナンスとなると昔は歯科衛生士さんが30分ぐらいでシャカシャカ歯をクリーニングして、患者さんと会話をするというよりかは、とにかく手を動かして終わるっていう感じなんですが、スウェーデンではメンテナンスにたっぷり45分から60分の時間をとって、半分以上は患者さんと会話をして、半分は施術という感じなんです。

なるほど、そういった歯科衛生士とのコミュニケーションがないと患者さんもなかなか歯医者に通う理由ができない。そんなふうに感じて、患者さんをある意味ファン化するために「歯ブラシ」などのツールがあるんだなっていうのを気づかせてもらったのがスウェーデンでの見学でしたね。

-技術ではなく、コミュニケーションに差があったわけなんですね。

中原:そうなんです。スウェーデンだと本当に60分のうち30分は話しをしていて、30分の施術。日本みたいに衛生士さんがいっぱい手を動かすんじゃなくって、セルフケアについての指導をする時間なんですよね。ですから日本の歯科衛生士の働き方と効果も全然違うんです。実はうちの医院に最初の頃に務めてくださった歯科衛生士さんも、腱鞘炎になってしまって辞めてしまわれた方がいるんです。

せっかく歯科衛生士というライセンスを持って、今までがむしゃらに頑張ってきたのに、そういうふうに結果として違う職業に就かざるを得ないという現状も残念だなと思うんです。逆にスウェーデンの歯科衛生士さんは1回ライセンスを取った方はずっと続けていくことが多いんです。日本だと半分以上の人が、ライセンスを持ちながら歯科衛生士として働いてない現状もあったりして、そこも含めて気づきを得ました。

3.商品の選定「自分は物販で何がしたい?」

-流石の先生も最初から物販がうまくいったわけではないですよね?

中原:いや実は最初からうまく行ってしまってですね(笑)本にも書いてあると思うんですが学生時代のABCマートでのアルバイト経験がすごく生きました。6年間、大学在籍中ずっと働いていたことで、それこそディスプレイやポップに関しての経験と知識がついたんです。その辺もうまく活用したおかげで、最初8000円だった売り上げが5ヶ月くらいで100万にまでなったんですよね。

-8000円からあっという間に100万円はすごいですね。

中原:ですので最初から比較的うまくいってます。(笑)でも逆に言えば、ちゃんとやることをやれば誰でも結果が出ると思いますし、もし今、結果が出てない医院さんがあるのであれば、見直すところがあるのかなと思います。

-どこからまず手をつけたらいいんでしょうか。

中原:一番最初は商品の選定からなんですよね。もうそれは歯科医院だろうが、どんなお店だろうが変わらないんですけど、自分が何をしたいのか、そのために必要な商品は何なのかっていうところがわかっていないといけないと思います。よく「先生が置いている商品、アイテムのリストをとりあえずください」と言われることがすごく多いんですが、それをやっても売れるわけではないんですよ。

今まで私が440医院ぐらいで、いろんな物販の個別指導してきて、解ったことなんですが、人と同じようにやったとしても医院のカラーが違うと全然売れ方も違うんですね。例えば、何件か私の医院と同じラインナップを置いてみて、ディスプレイも僕がプロデュースしたんですけど、やっぱり売れないんです。

4.自分の医院のカラーを理解しているのか?

-医院のカラーが違うと、置く商品も変わるので、まずは自分の医院で何をしたいかっていうのを決めて、その後に、それに合った商品を選ぶこと。そこから始めないと失敗するということですね。

中原:そうですね。ただ自分の医院のカラー自体よくわかってない先生が実は多い印象です。「うちの医院は何でもできます」みたいな先生が結構多くいらっしゃるんですが、何でもできる中でも何か強みがあるからその医院が多分存続しているはずなんですよね。その強みを改めて見つめ直していただいて、そこから商品を選んでいけるといいとおもいますね。

-ちなみに中原先生の場合はどういう強みを?

中原:まず一つはですね、僕はもうこの「TePe」というブランドなんです。TePeのアンバサダーをやってまして、実は僕は国際大使なんですよ。日本にはたった4人しかいないそうなんです。世界でも9人。その中の1人ということでこのTePeブランドを推しているんです。TePeのことなら何でも聞いてくれ、ぐらいの強みがあるんです。これが一つですね。

もう一つはこういう入れ歯系のグッズなんですけど、うちの医院の強みとしては、入れ歯に強いというのがあって、治療も入れ歯に強いし、入れ歯自体も毎日のケアがどうしても必要になります。そういった入れ歯のケアに非常に強いというのが、うちの医院のカラーですかね。

-まず強みを見つける。そうなると必ずしも商品の種類はたくさんあればいいってことではなくなりますよね?

中原:その通りですね。うちのプロデュースした医院さんでいうと、岐阜県に商品は30アイテムしかない、さらにドクターと奥様の2人しかいらっしゃらない医院さんがあるんですけど、それでも物販で月56万円ぐらいの売り上げがあったりするので、数に限った話ではなくて自分の医院の強みをしっかり理解されていることがいかに大切かがわかるかなとは思います。

→インタビュー後編に続く

中原 維浩 (なかはら まさひろ)

医療法人社団栄昂会 理事長 DECT株式会社 代表取締役社長 歯科医師 メディカルコーチ2010年東京歯科大学卒業、2016年細田歯科医院院長に就任。2018年戸塚駅前トリコ歯科 開業。2020年医療法人社団栄昂会 理事長に就任し、2021年 中原まさひろ医療物販学ラボ 主宰を務める。オーラル・インプラント・リハビリテーション・シリーズ等著書、DVD、TVなどメディアにも出演しクリニックの物販戦略のスペシャリストとして活躍中。

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