2024.04.26
経営
2024.01.19
経営
歯科医師経営において「物販」というものは決して無視することのできないものです。月の売り上げが100万円を超えるような医院もあれば、10万円も売れないような医院もあります。
「置いている商品が悪いから?」「売り方が良くないから?」その差はどこにあるのでしょうか?「そもそもどうやって売ったらいいかわからない」という方もいるかもしれません。
今回そんな多くの歯科医院が抱えている「物販」の悩みを、600医院以上の物販の現場を見てきた物販のスペシャリスト、医療法人社団栄昂会 理事長 中原維浩(まさひろ)先生にぶつけ、医療物販のノウハウやテクニック、医療経営のヒントを伺ってきました。後編です。
前編では「商品選定」そのためにはまず「自分の医院のカラーや強み」を理解することが大切という話をしていただきました。では次のステップはどう踏んでいくべきでしょうか?
中原維浩先生(以下:中原):はい。そうすると、今度は商品の知識を入れなきゃいけないですね。医院の強みを見つけたら次はその選んだ商品の強みを見つけてあげることが大事かなと思いますね。
-知識を入れると言っても、どのくらいまでの知識が必要なんでしょうか。
中原:そうですね、うちのオンラインサロンとかですと1年間で90分×12回の講座を受けていただいて初めて一人前という設定をしています。ですから、できればそのぐらいの知識は入れて欲しいなと思うわけです。それがないと例えば、世の中には歯磨き粉といっても、日本でバーコードを取っている歯磨き粉って700種類以上あるんです。それにさらに最近だと、並行輸入で海外のものも簡単に手に入る時代になっています。
そんな中、我々歯科医師や歯科衛生士しかその歯ブラシ、歯磨き粉の専門家は世の中にいないわけです。つまり我々がその成分さえ見れば、それがどんなものかってわかるレベルにまで、せめてならないといけないと思うのですが、残念ながら現在の大学教育ではそこまでの教育がないというのも難しいところなのかもしれません。現在、日本だけじゃなく世界においても、誰も歯ブラシ歯、磨き粉の専門家というのはいない状態です。そこを僕は今、育成しているところです。
-確かにそうですね。歯ブラシ歯磨き粉を専門家である歯科医院で買うのではなく、ほとんどがドラッグストアとスーパーで買っている現状が日本にはあります。
中原:そうですね。4200億もオーラルケアのマーケットは売り上げとしてあるのに、その中でたった400億しか、この歯科のマーケットにはないので、そこにはまだやれることがあるんじゃないかなと僕は思います。
-医院の商品のディスプレイについてですが、ポップを見ても工夫をされているんだなとやはり感じます。
中原:そうですね。ただ、アイテム数が少なければ正直そんなにポップはいらないかもしれないですけど、多くなればなるほど、POPって僕は必要だと思っています。例えば商品をざっと見ていただいたときに、自分にどの商品が合ってるのかはなかなかわからないと思うんですよね。
-確かにそうですね。
中原:実はうちは昔もっとポップが多かったんですよ。でもあえて減らしたんです。本当に推し商品に絞るために。ポップを減らして、僕らがなるべくその人に合ったものを選んであげるっていうところを主にして、ディスプレイを考えました。例えば我々からすると、保険商品とか、いろんな生命保険会社とかいろんな保険会社から出ていますよね。ただ僕らはその中でどれが自分に適切な保険なのかってなかなかわからないですよね。
それはデンタルグッズでも同じで、うちのディスプレイの中で自分にどれが合ってるのかって簡単にはわからない。だから、昔はポップをきっかけに買ってもらえたらいいなと思ってたんですけど、今は本当に患者さんあったものを使って欲しいなという思いから、ポップをある程度なくして、みんながみんなポップに気付けるぐらいにして、注力商品にだけ付けている感じです。
-ディスプレイなどはどれぐらいのペースで見直されたりするんですか?
中原:毎月です。
-毎月も!それは、何を見て見直されるんですか。
中原:そうですね。もちろんよく売れる商品と、なかなか売れない商品というのはあります。ただそれはあるべきだと思っています。例えばいろんな人に受け入れやすい万能型の商品と、ごく一部の人に刺さる商品とがありますが、ニッチな商品がディスプレイの下に行けばいいのかっていうとそういう問題ではないんですね。
僕は物販は「処方」というコンセプトなので、イメージとして大切にしているのは毎月変わること。ディズニーランドとかもそうしていますけど、ディスプレイが毎月変わることで注意と興味を引くことがあると思うんです。ですから商品の種類が変わるわけではないんですけど、ディスプレイを組み替えて、見せ方を変えるという工夫は必要だと思います。
-物販の目標はどのあたりに置くべきなんでしょうか。
中原:冒頭の話に戻りますがその医院次第だと思います。医院によって、物販で売り上げを立てたいのであれば、売り上げを目標設定のゴールにすべきですし。うちみたいにコミュニケーションツールとして、患者さんのデンタルIQを上げるためのツールとするのであれば、連動して自費が上がったっていう時点で、もうある程度成功なのかなと思います。
例えば「デンタルIQを上げるため」を目標にした場合、僕らの治療って、1年目の先生が行っても、僕みたいなベテランがやっても、結果のほとんどは似てしまうので、患者さんは治療の質の差ってなかなかわかってくれないんです。
僕らはすごい時間をかけてこだわりの治療をしても、いわゆる吉野家的なある程度上手い、早い、安い治療を望まれている患者さんには、ベテランの匠の技っていうのはいらないんですよね。でも歯ブラシっていうものはすごく患者さん自身で違いをわかってもらえるので患者さんのデンタルIQに影響を与えられると思うんですよね。
-歯科医院さんの物販への意識っていうのは、実際触れ合ってみて、どういうものかなと感じていて、どこに課題を感じたりされてますか?
中原:学生教育に関しては課題があると思うんですね。例えば、医科はすごいなと思ったことがあったんですけど、コンタクトレンズってあるじゃないですか。あれは必ず眼科に行って処方箋をもらった上でコンタクトレンズっていうのは初めて買えるわけです。そういった確固たる仕組みがある。
一方で我々の業界でいうと、電動歯ブラシとかそうなんですが、電動歯ブラシって使い方を間違えると凶器にもなりうるんですよね。自分の口の中を健康にするどころか、歯茎を下げてしまったり、傷つけてしまったりするので、逆にもう電動歯ブラシは処方箋がないと買えないようにした方が国民のためだと思うんですよね。
なのにそれをやってこなかったのは、やっぱり僕らがその辺の教育を受けてこなかったので、正直知らないんです。僕も、本当に歯科医師3年目まで何にも知らなくて「どの歯ブラシでも一緒でしょ」ぐらいに思っていた人間です。そんな中で初めてスウェーデンに行って、セルフケアグッズについても、限られた時間の中でかなりの時間割いて教育を行っていたのを目の当たりにして、なるほど、だからスウェーデンは予防先進国と言われるんだと思ったんです。
僕もそもそもその時点まで予防って誰がやるものっていうのをはき違えていました。予防って僕らが歯科医師や歯科衛生士が手助けをすればいいのかと思っていたら、全然違っていて、患者さん自身が動かないと全く予防ではないんですよね。
日本で13年前ぐらいに、予防歯科っていう言葉が出てきて歯医者さん定期的に通うことが予防歯科って日本ではなりつつあったんですけど、最近になって改めて予防って患者さん自身がやるものではないか、ということに気づきを得た方々が、広めてくれているというところです。
デンタルグッズ、オーラルケアの商品に歯科医師と歯科衛生士に興味がないんだったら、誰がこの分野の専門家やねんっていうのはずっと言っています。薬局でも教えてくれないし、ネットにも書いてないし、誰がどう選んであげたらいいのかっていうのを考えないといけないと思います。
-物販から変えられるものもたくさんあるということなんでしょうね
中原:カンボジアとかラオスとか、あとモンゴルの一部の地域みたいな発展途上国と言われるところでは歯ブラシ1本で命が救えるっていうふうに言われるぐらいやっぱり、全ての入口なんですよね口というのは。ここの衛生環境を保つことで、ある程度体にいい影響を与えることができる。僕もボランティアに参加したことがあるんですけど、歯ブラシ1本で本当に救える命がそこにはあるんですよね。
中原 維浩 (なかはら まさひろ)
医療法人社団栄昂会 理事長 DECT株式会社 代表取締役社長 歯科医師 メディカルコーチ
2010年東京歯科大学卒業、2016年細田歯科医院院長に就任。2018年戸塚駅前トリコ歯科 開業。2020年医療法人社団栄昂会 理事長に就任し、2021年 中原まさひろ医療物販学ラボ 主宰を務める。オーラル・インプラント・リハビリテーション・シリーズ等著書、DVD、TVなどメディアにも出演しクリニックの物販戦略のスペシャリストとして活躍中。
2024.04.02
経営
2024.03.11
経営
2023.12.13
経営
2024.06.07
テクノロジー
2023.12.13
テクノロジー
2024.05.10
テクノロジー
2023.12.13
経営
2023.12.13
テクノロジー