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歯科医院を経営されている方ならば一度は頭を悩ませたことがあるであろう受付業務。単純に歯科医院の受付は煩雑、多忙を極めるだけでなく、人手が足りない、有能なスタッフが退職してしまい業務が回らなくなってしまったなど課題は多いものです。
「DX」「業務効率化」とは聞いたことはあるけれど、他の医院はどのように取り入れているのだろうか?何を基準にシステムを選んでいるの?スタッフの反発はないのだろうか?など気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、歯科医院の受付周りにおける業務効率化、現在の取り組み状況や課題、理想の受付のあり方などについて、新栄町歯科医院院長の佐久間利喜先生にお話を伺いました。機械化のメリットや効率化に向けた投資判断基準などについても話を伺っているので参考にしてみてください。
-今日、佐久間先生に伺いたいことは「受付周りの業務効率化」についてです。多くの歯科医院さんでも課題になっているところだとは思うのですが、佐久間先生はご経験のなかでどのように感じられていますか。
佐久間利喜先生(以下、佐久間):まず歯科医院は受付の人員が今、非常に厳しいんですよね。歯科医院は開業時、大体受付の方は1人からスタートするんです。そうするとまず電話が鳴る、既存のアポイントの患者さんが来る、急患が来る、チェアサイドからカルテがやってくる、会計が始まるみたいな感じになるわけですが、そうするとパニックになるような忙しさになる時があるんです。
ただ、業務をしているうちに、そういった忙しい時でもうまく捌けるような優秀なスタッフが成長してくれるんですけど、今度は急に抜けてしまったりとか、辞めてしまったりとか産休入ってしまったりとかってなると「代わりの人がいない」っていうことがあるんですよね。
じゃあ今度はそうなる前に人を増やしておけるかっていうところになります。実際うちの医院は人を増やしたんですよ。業務がもう間に合わないってことで増やしたんですけど、それでも間に合わなかったりとか、あるいは逆に今度暇な時間ができてしまったとかになって、これはちょっと効率が悪いなっていうことになり、それはそれで困ってしまうと。
多分、受付周りの人員に関しては今お話ししたように困ってる歯科医院さんの方は多いと思います。そうなると、受付の人が休むとなったら、それでは業務が回らないから診療自体を休むという選択をせざるを得ない医院さんも出てきてしまうわけです。
-そうなんですね。となるとやはり佐久間先生のところでも、最初から業務効率化ツールを積極的に取り入れてきたというよりは、問題が顕在化してきて、やっぱり入れないと駄目だなとなったという感じですか。
佐久間:そうですね。地方は特に働き手がいないんですよ。昔は募集をかければ来てくれたんですけど、今は全然集まらないし、そもそも若い人自体がとても少ないんです。これはどの業種にとっても同じことなんですが、誰かいない?とか、いい人いない?っていう言葉をいろんなところで聞くんですけど、なかなかいい人はいないんですよね。
となると今いる人たちでなんとか回すか、あるいは自分たちでやれないのであれば外部に委託できるものはもうどんどん出してって、我々でないとできない業務を集中して、やりたいというふうにはずっと思ってます。
あと、これは僕の夢なんですが、将来的には受付の人を0人とか、もしくは0.5人ぐらいにしたいんです。業務の難しいことも含めてやってもらえるようなツールを取り入れて。ツールだけで中の複雑なことも処理できて、受付もできるっていうふうにしたいです。
あるいは全員が同じレベルで業務ができるような簡単なシステムを導入できるようになって欲しいなとも思います。もしくはチェアサイドで完結しちゃうシステム。会計も予約も担当の衛生士、担当のアシスタント、担当のドクターが会計までやっちゃいましょうかっていうふうに処理ができて、受付は診察券、とか最初のチェックだけ、みたいな感じにです。おそらく僕は将来そうなるんじゃないかなと思うんですね。業界はもう人材がいませんから。人件費も高くなっていくことも免れないはずです。
-佐久間先生のところで、今、実際に導入されている業務効率化のDXツールはどんなものがありますか。
佐久間:実は電話応対の自動化などもそうですが、その前に受付の人が産休に入ったときがあったので、アバターを使って遠隔で受付の接客ができるサービスを使ったんですよ。これは歯科では初めてのことだったそうです。
ただそのサービス自体が歯科部門から撤退してしまったんですよね。歯科専門の人を育てるのも、対応できるようにするのも、やっぱり難しいんですって。ただ説明するだけじゃなくていろんなパターンがあるわけですから、それを適切に話さなきゃいけないってなったときに「ちょっと難しい」ということで社長の方から「申し訳ないけど一時撤退させてほしい」ということで全部機材が持っていかれたんです。となるとまだそういった受付業務の自動化や遠隔対応は早かったのかなと感じましたね。
ただ今度はChatGPTのような生成AIがどんどん活躍するようになったので、僕はそろそろいけるんじゃないかなと思ったりはしていますね。しかも歯科業界からじゃなくって他の業界からできるようになってますよね。そういったものが歯科に回ってきた時に、受付が全部とは言わないまでも0.5人ぐらいまで減って、あとは生成AIがうまく利用できるようになるんじゃないかなと思ってます。
-なるほど。電話の自動対応と受付の遠隔対応にもチャレンジしたわけですね。他にはありましたか。
佐久間:自動精算機ですね。コロナのときに距離を置かないといけないとか、あるいはもうお金を触りたくないとかありましたよね。そこに加えて、実際に計算が合わないとかという問題が出てきたりしていました。あとクレジットカードも種類が増えて払えるようになりましたから、自動精算にしようということで自動精算機も入れたんですよ。
ですから自動精算機が入って、予約システムが入って、電話の自動応対が入って、アバター遠隔受付はなくなったんですけど、受付の業務負担はだいぶ減りました。それでも業務が集中しちゃうと、スタッフ2人じゃ間に合わなくなる瞬間はありますけどね。
-実際、業務効率化のツールを導入して、現場の声としては「楽になった」「助かる」っていうのは多かったですか。
佐久間:それはありましたよね。自動精算機もそうですし、電話もそうですし、すごく良くなってますね。
-予約管理システムなど新しいツールが入ってくる時にスタッフの方はすんなり受け入れてくださるものなのでしょうか。
佐久間:いえ、すごく反発がきますよ。僕が言うと特にね(笑)
-業務効率化のためとはいえ、最初は一時的に負担が増えますよね。その辺りどうやって処理されたっていうか、折り合いをつけたんでしょうか。
佐久間:昔は僕の発言力が結構あったので「いいからやって」っていうのが言えたんですけど(笑)ここ最近はですね、まずそのツールの情報を流すんですよ。僕としてはこういう方向に医院を持って行きたいんだよねって。とは言っても僕の言うことを大体は聞いてくれないんです。どこの医院もそうかもしれないですけど。また始まったってなるだけなので(笑)
ですから学会のようなところにスタッフみんなを連れて行くんですよ。そこでセミナーを一緒に聴きながら、外部の人がこういうことやってるんですよ、こういう便利なものがあるんですよっていうのをスタッフにも知ってもらえると「なるほどね」ってみんな思ってくれて、導入のハードルが下がるんじゃないかなって思ってます。
-確かに、受付側の人から「取り入れたい」と思ってもらう流れを作ることが大切なんですね。
佐久間:そうですね。ただ、やっぱり変化をすごく嫌う人もいます。今、あるもので何とかなっているのであればそのままでいいじゃないですか、というふうになることも確かにあります。でも僕は、いやこのままではいずれ破綻もするだろうし、いずれあなた方が辞めたときにどうするのって話をするんです。
人もいないのであれば自動化の方に振る、ないし外部の方に出せるものは出して、楽をしようって言うんです。最初を乗り越えられれば楽になるから、だからもうちょい頑張ってやろうよと伝えるんですね。問題点が出たらそこでまたPDCAを回して、どうやったらうまくできるかって考えようと、駄目だったら撤退しようよっていうようにですね。まずやってみないと問題点すらわからないですから。
-導入して、使い慣れさえすれば、みなさん「入れてよかったな」と大抵はなるんですよね。
佐久間:そうです。うちの医院では予約管理システムを導入しましたが、スマートフォンでスタッフみんなが予約状況などを見られるようになりました。たとえ家にいたとしても、明日誰がくるなとか、自分の担当は何があるのかなっていうのは、ある程度見て把握できるようになったので良かったという声はありますね。
また予約管理は紙でやってたので、それこそアポイントを取る時などは受付で紙の取り合いになるんですよ。それがなくなったこともよかったと思ってます。
中編に続く
佐久間 利喜(さくま としき)
歯科医師・歯学博士
1998年岩手医科大学大学歯学部卒業。特定の科目に拘らず、広く臨床を学びたいという思いから1998年〜01年(医)大樹会 小笠原歯科クリニックに勤務。2001年には新栄町歯科医院を開設する。2011年には新潟大学大学院(口腔生理学講座)に進み博士号を取得。後進の育成を含めた歯科医療に従事、貢献している。
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