2024.03.11

経営

歯科医院スタッフの適正人数はどのくらい?

「歯科医院のスタッフの人数は何人が良いのだろう」

「適正な人数を計算するための方法があれば知りたい」

このような疑問を持っている、歯科医院の経営者もいるのではないでしょうか。

この記事では、歯科医院の各スタッフの役割や、それぞれ何人ずつが適正であるかについて徹底解説。売上のうちどれだけを人件費にあてれば良いか、生産性をどのように算出すれば良いかについても紹介します。

歯科医院の経営者にとって必見の内容です。ぜひ最後までご覧ください。

目次

  1. 歯科医院スタッフの役割
  2. 歯科医院スタッフの適正人数
  3. 適正人件費の算出方法
  4. 生産性の目安を算出する方法
  5. 正社員とパートの割合
  6. 歯科医院による離職率
  7. まとめ

1.歯科医院スタッフの役割

前提として、歯科医院を運営していくためには、下記のスタッフが欠かせません。

  • 歯科医師
  • 歯科衛生士
  • 歯科助手
  • 受付

歯科医師は、歯科医院での治療において中心となる存在です。患者と直接向き合い、それぞれに最適な治療を施します。歯を守るための指導や在宅歯科診療も、歯科医師の大切な仕事です。

歯科衛生士は主に、歯科予防処置を担当します。具体的には、患者の歯垢や歯石を取り除くなどの処置です。歯科医師と同様に、ブラッシング指導や在宅診療なども行っています。

歯科助手の役割は、歯科医師のアシスタントです。歯科医師が円滑に治療を進められるようサポートするのが歯科助手のミッションです。

受付が行っている仕事には、患者の予約調整やカルテの管理などが挙げられます。患者と最初に顔を合わせるスタッフであるため、歯科医院の印象に与える影響は大きく、医院の顔となる存在です。

2.歯科医院スタッフの適正人数

歯科医院のスタッフの適正人数は、医院の規模や予算によっても左右されます。運転資金に余裕がないうちは、社会保険への加入義務のない4人を上限に採用するのがおすすめです。

スタッフが5人を超えると、正社員は社会保険に加入しなければなりません。1健康保険料や厚生年金保険料などは労使折半のため、半額は医院側で負担する必要があります。特に、新規に歯科医院を開業する場合、従業員の社会保険料は無視できない負担となり得るでしょう。

スタッフを4人とする場合、歯科衛生士を2〜3人、歯科助手を1〜2人採用するのが無難です。リソース配置については、一般的には歯科助手が受付業務を兼ねる傾向にあります。なお、社会保険への加入義務がない場合、スタッフは個人で国民健康保険や国民年金に加入することになります。

3.適正人件費の算出方法

適正な人件費を把握するには、人件費率を求めるのが有効です。人件費率は「人件費÷売上高」の式で求められます。

個人経営の歯科医院ならば、人件費率は約20%が基準値です。法人の場合は、25%〜28%ほどを目安にしましょう。

たとえば、個人医院の年商が5,000万円の場合、人件費には1,000万円程度充ててよいことになります。この場合、雇えるスタッフは多くても3名程度です。パート雇用も視野に入ります。自分以外にも歯科医師を雇うなら、さらに多くの人件費が必要です。

給与はスタッフのモチベーションに直結するため、数%程度であれば人件費率が高くなっても問題ありません。しかし、個人経営では24%、法人では33%を超えると資金繰りが悪化します。

なお、社会保険に加入すると医院側の負担が増えるため、これまで20%を目安としていた場合は23%程度に引き上げる必要があります。人件費が高すぎると経営がままならなくなる一方、安すぎるとスタッフが辞めてしまうため、両者のバランスを取らなければなりません。

4.生産性の目安を算出する方法

歯科医院における生産性を算出する方法として、チェア1台あたりの月間売上と、スタッフ1人あたりの月間売上があります。これらの指標を用いれば、どれだけ効率的に利益を生み出しているかが把握できます。

たとえば、チェア3台・スタッフ4人の歯科医院が、月間で600万円を売り上げたとしましょう。このケースでは、チェア1台あたりの月間売上が200万円、スタッフ1人あたりの月間売上が150万円です。

生産性の目安は以下を参考にしてください。

チェア1台あたりの月間売上200~250万円
スタッフ1人あたりの月間売上125~150万円

1つの指標だけでなく、両方とも算出することで、多角的な経営分析が可能になります。以上の生産性を目標として、歯科医院を経営しましょう。

5.正社員とパートの割合

円滑な歯科医院の運営のためには、正社員を中心に雇用しましょう。パートの場合は基本的に時給制となるため、正社員として雇用するよりも、人件費を抑えられます。

ただし、パートとしての雇用にはデメリットもあります。パートに頼りすぎると、シフトの都合でスタッフの人数が不足する恐れがあります。シフト被りによりどちらかを休ませなければならないこともあるでしょう。

正社員で足りない部分をパートで補うと、人件費を抑えつつ必要なスタッフ数を確保できます。

6.歯科医院による離職率

平成29年~30年度における調査では、歯科衛生士の70.2%が転職を経験しています。20歳代でも40.7%が転職を経験しており、歯科業界では早期の離職が進んでいるのが現状です。2

歯科医院での離職率が高い理由として、以下3点が考えられます。

  • スタッフ1人あたりの負担が大きい
  • 人間関係の問題が起こりやすい
  • 転職先を見つけやすい

多くの歯科医院では人手不足が発生しており、その分1人のスタッフにかかる負担が大きくなりがちです。長時間労働が続くと、スタッフはより良い職場環境を求めて転職を検討するでしょう。

歯科医院では、人間関係の問題が起こりやすい点も無視できません。異なる立場のスタッフが、近い距離で仕事をしていることなどがその原因です。

歯科医療業界における転職のしやすさも、離職率を高めている要因の一つです。業界全体が慢性的な人手不足状態にある点や、専門性が高く需要が大きい点などが理由として考えられます。

7.まとめ

歯科医院には、歯科医師・歯科衛生士・歯科助手・受付など、さまざまな職種のスタッフが必要です。基準となるスタッフ数を判断するには、社会保険料の加入義務が発生する5名が分かれ目です。

歯科医院を長く経営するために適正な人件費は、個人経営の場合は売上高の20%ほどです。これより高いと経営が不安定になる可能性があります。また、チェア1台やスタッフ1人あたりの売上を計算し、生産性を把握しておくのも重要です。
人手不足などの理由により、歯科医院は離職率が高い傾向にあります。足りない部分はパートで雇用して補うなどして、歯科医院を運営しましょう。

  1. 国土交通省「社会保険の適用関係について」 ↩︎
  2. 厚生労働省「歯科衛生士及び歯科技工士の就業状況等に基づく安定供給方策に関する研究」 ↩︎
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