2024.02.23

テクノロジー

DXが解決する人材不足の課題|業務効率化について佐久間利喜先生インタビュー(後編)

歯科医院を経営されている方ならば一度は頭を悩ませたことがあるであろう受付業務。単純に歯科医院の受付は煩雑、多忙を極めるだけでなく、人手が足りない、有能なスタッフが退職してしまい業務が回らなくなってしまったなど課題は多いものです。

「DX」「業務効率化」とは聞いたことはあるけれど、他の医院はどのように取り入れているのだろうか?何を基準にシステムを選んでいるの?スタッフの反発はないのだろうか?など気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、歯科医院の受付周りにおける業務効率化、現在の取り組み状況や課題、理想の受付のあり方などについて、新栄町歯科医院院長の佐久間利喜先生にお話を伺いました。機械化のメリットや効率化に向けた投資判断基準などについても話を伺っているので参考にしてみてください。

前編中編はこちら

目次

  1. 進むDX、その中で人であるべきところ
  2. 機械にはできないコミュニケーション
  3. もう避けては通れない、DX化の流れ
  4. DXのような技術が歯科の世界を変えるところを見たい

1.進むDX、その中で人であるべきところ

-これからどんどん業務効率化ツールが取り入れられるような世の中になるとは思うんですすが、その中で佐久間先生は、機械化できる部分、自動化できる部分と、いや、これだけは譲れない、人じゃなきゃいけないっていう部分はどのあたりに境があるなと考えていらっしゃいますか。

佐久間:まず、歯の治療自体は、自動化っていうのは絶対できないですよね。もう一つは患者さんへの説明ですね。やっぱり顔を見て、表情を見て喋らないといけないことってあると思うんですよ。Web会議みたいな感じでも全然いいんですけど、少なくとも患者さんと顔を見ながら話ができるようにしないと駄目だと思うんですよね。

文章だけとか、声だけとかっていうのはやっぱり駄目で、そこはやっぱりオンタイムでないと伝わらないことがあるんですよ。録画だとねみなさんやっぱり見ないんですよ。ですからそこは話をしながら雑談交えながらの、こうだよ伝えていけると、患者さんの心に残るんじゃないかなと思うんですよね。

-それはもちろんチェアサイドでも、受付でもということですよね。

佐久間:そうです。受付で話す内容をチェアサイドに持ってくとか、あるいは、オンタイムのモニター越しで説明をしていくというのはありだと思うんですけど、機械が全部喋ってというのはちょっとないんじゃないかなって思っていますね。

それこそ業態にもよると思いますが、AmazonGo(店員がいないで会計をしなくて済むサービス)のようなサービスはコンビニではいいかもしれませんけどね。歯科医院の受付業務というのは会計業務や電話業務がなくなったとしても、例えば「体調どうですか」とか、「お疲れ様でした」というコミュニケーションは、やっぱり欲しいんですよね。

-特に今やっぱり先生もリピーターが多かったり,メンテナンスでの方が多いってなると、コミュニケーションは大切なんだなと思いますね。そのために人間でなければいけない部分が必ずあると。

2.機械にはできないコミュニケーション

佐久間:そうなんですよ。患者さんは、自分のことをわかってくれる人じゃないとやっぱり駄目なんです。だからうちでも担当制を敷いているんですけど。何かの理由で担当が休んで、他の人間で担当してもいいですかと聞くと、半分の患者さんが嫌だっていうんですよね。これはやっぱり自分のことをわかってくれてる人に担当してもらいたいっていう思いが患者さんにあるということなんですが、すごく大事なことなんだと感じています。

-本当にそうですよね。佐久間先生のお話を聞いていると、多分さっき言った時間対効果じゃないですが、時間ができると受付の方が患者さんとコミュニケーションをとる時間も多くなるんですよね。

佐久間:そうなんですよね。コミュニケーションが取れていれば、何か変わったとか、もしくは何かクレームがあった時も、すぐに対応ができたりするので、そういった時間がすごくいいと思うんですよ。

3.もう避けては通れない、DX化の流れ

-本当に佐久間先生は業務効率化ツールから生まれるものに対してすごく積極的に柔軟に取り入れてると思います。ただ、どうでしょう日本の歯科医院さんたちは課題は持ちながらもそういった業務効率化ツールを取り入れることに対してちょっと一歩勇気がなかったりとか、実際いろいろ入れてないところもあると思うんです。とはいえ、やはり取り入れる必要性というのは強く感じられていますか?

佐久間:思ってます。全体的に思ってますね。ある一定の年齢の僕たちの上の世代の人たちはやらないという方もきっと多いと思うんですが、これから開業するよとか、30代40代だけどもうちょっと頑張るんでっていう人たちは絶対入れなきゃいけないものだと僕は思ってます。

-世の中の変化を見てもそういう流れがあります。

佐久間:どう考えてもないと困りますよ。こういう業務効率化ツールというものは。そういう世の中になる、というかもうなってます。(笑)スマホみたいなもので、ないと困る。という感じになっていますから。

-ちなみに世の中にこれからDX的なサービスってたくさん出てくると思うんですけども、先生はどうやってその良い情報というか、価値のある情報を集められてるんですか。

佐久間:いろんなところに行って、いろんな人と会って直接話を聞くことが大切なんじゃないかと思いますね。ネットの情報って結構、不正確なものもあるし、やっぱり見て、できたら触ってみて、そうじゃないとわからないところってあるじゃないですか。だからできるだけ足を運んで、現地まで行って、そこでその使った人の話を聞くんですよ。

メーカーのコマーシャル的なものだけじゃなくてね。本当のところどうなのって言うのを。実はこういうところが良くてとか、まだちょっとね、みたいなことを聞いて、そこを目をつぶるかそれともそのまま行っちゃうかっていうのは、その人の判断にもよりますけど、何か欲しいなって思ったときはやっぱり使ってるところに聞きにいくことが大切です。

4.DXのような技術が歯科の世界を変えるところを見たい

-最後になりますが、先生の理想で、「こんなサービス、今ないけど欲しい」「こんなツールがあったら欲しい」って思うものは何かあったりしますか。

佐久間:実はあるんですよ。僕、遠隔医療学会というものに入っているんですけど、つまり何が言いたいかというと、遠隔診療ができるようにしたいんですね。これから絶対来る技術だと思ってるんですよ。

ただし、今できるのは遠隔で面談しての問診であったりとか投薬であったりとか、あるいは、僕たちであれば指導ができるという程度のものです。遠隔で患者さんにこうした方がいいよっていうのはできるんですが、僕が求めるのはダヴィンチ(手術支援ロボット)みたいに、本当に遠くで自分の手の動きが再現できるような、施術が行えるような物なんですよ。

そのうちできると思うんですよね。そうすると、どこでも同じ技術というか、ある先生のオペが近くでも遠くでも受けることができるっていうような時代になって来るわけじゃないですか。僕は、そういうことが実現された時代を見届けて、歯医者を終わりにしたいと思ってます。

-治療の地域格差みたいなものがなくなっていくんでしょうね。

佐久間:インプラントに関してはおそらくできるんじゃないかなと思うんです。ただこれが形成であったりとかエンドであったりとなったときに、例えばVRを使うのかとかAR使うとか、というふうに進んでいくのかはちょっとわからないですけど、医科の方から徐々に歯科の方にアップデートされて入ってくるのかなとは思ってます。

-今の話聞いてるこれからは使う側、歯科医師さん自身のリテラシーも高くなっていかないと、単純に取り入れるだけでは多分扱えない時代が来ますよね。

佐久間:来ますね。僕、開業医ってこんなにパソコン使う業種だったのかって思ってますよ(笑)昔なんてレントゲンは現像だったんですからね。印刷して寝かせて現室に入れてみたいな。僕が開業したときだってパソコンは2台しか置いてませんでしたからね。レセコンとノートパソコンだけっていう、そこからここまでの時代になるんですから。

でも僕は今すごく楽しいんですよ。何も変わっていかない、ずっと同じような時代じゃなくて、どんどん変わっていく時代の方が楽しいです。何か新しいものが出てきて「なにこれすごい」というのを感じることができているので楽しいですね。

佐久間 利喜(さくま としき)

歯科医師・歯学博士

1998年岩手医科大学大学歯学部卒業。特定の科目に拘らず、広く臨床を学びたいという思いから1998年〜01年(医)大樹会 小笠原歯科クリニックに勤務。2001年には新栄町歯科医院を開設する。2011年には新潟大学大学院(口腔生理学講座)に進み博士号を取得。後進の育成を含めた歯科医療に従事、貢献している。

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