2024.03.01

経営

開業を失敗する歯科医院の特徴とは?経営を成功に導くポイントや必要なスキルについて解説

「歯科医院を開業する予定だけど、失敗したくない」

「歯科医院の経営を成功させるポイントや必要なスキルは?」

歯科医院の開業を検討している人の多くは、上記の疑問を抱いていることでしょう。

歯科医療業界は競争が激しく、戦略的に開業しないと失敗する可能性が高いです。一方で、競争の激しい業界においても患者を獲得し、どんどん売上を伸ばしている歯科医院もあります。

この記事では、開業後に失敗する歯科医院の特徴のほか、開業に失敗しないためのポイントや必要なスキルも解説します。歯科医院を開業し、成功させたい人はぜひご覧ください。

目次

  1. コンビニの数よりも多い、歯科医院開業の現実
  2. 開業後に失敗する歯科医院の特徴
    • 2-1 開業前の事前調査が不足している
    • 2-2 他院との差別化要素がない
    • 2-3 経営者としての自覚がない
    • 2-4 事業計画書を作成していない
  3. 歯科医院の開業で失敗しないためのポイント
    • 3-1 新規患者数を増やす
    • 3-2 自費診療患者の割合を増やす
    • 3-3 開業場所を選定する
    • 3-4 歯科衛生士などのスタッフ確保
  4. 歯科医院の開業に必要な、技術と知識
    • 4-1 治療技術
    • 4-2 経営知識
    • 4-3 マーケティング知識
    • 4-4 法律や財務に関する知識
    • 4-5 マネジメントスキル
  5. まとめ

1.コンビニの数よりも多い、歯科医院開業の現実

厚生労働省の2022年のデータによると、歯科医院数は約67,000施設にのぼります。1全国に約55,000店あるコンビニよりも10,000件以上も多いです。2

また、2021年10月~2022年9月に開設された歯科医院は1,333施設ありましたが、同期間で廃業した歯科医院も1,410施設ありました。新たな歯科医院が開業すると同時に、それ以上の医院が廃業しているのが現状です。

廃業する原因は少子高齢化などの社会的背景によるものもありますが、経営者側のミスによるものも少なからずあります。

今後さらに人口減少が進めば、今よりも競争が激化し、廃業に追い込まれる歯科医院数が増加するでしょう。社会が変化しても生き残るためには、治療技術だけでなく、緻密な経営戦略が欠かせません。

2.開業後に失敗する歯科医院の特徴

開業後に失敗する歯科医院の多くには、以下の4つの特徴があります。

  1. 開業前の事前準備が不足している
  2. 他院との差別化要素がない
  3. 経営者としての自覚がない
  4. 事業計画書を作成していない

開業に失敗しないために、それぞれの特徴をよく確認しておきましょう。

2-1 開業前の事前調査が不足している

開業に失敗してしまう歯科医院は、開業前の事前調査が十分でない可能性があります。

多くの歯科医師は、歯科治療に関する知識には長けているものの、市場調査や競合分析には慣れていません。事前調査が足りないと開業エリアの患者層やニーズ、競合を把握しきれていないため、予定していた利益目標の達成は難しいでしょう。

開業に失敗してしまう歯科医院は、以下の項目の調査が不十分な可能性があります。

  • 開業エリアの人口統計
  • 近隣の歯科医院の数や特徴
  • 潜在的な患者層のニーズ
  • 開業エリアの経済・地理的特徴

事前調査を怠ると、患者獲得機会の損失や資源の無駄遣いにつながり、最終的には医院の存続自体を危うくする可能性があります。競合や患者層だけでなく、開業エリアならではの特徴まで事前に調査するのが重要です。

2-2 他院との差別化要素がない

歯科医院が飽和している現代においては、他院との差別化不足が失敗に直結する大きな要因になりえます。

患者にとって、歯科医院はどこも同じに見えてしまうものです。そのため、特別な理由がない限り、患者は近所か知名度の高い医院を選ぶでしょう。成功している歯科医院には、他院と差別化できる明確な違いがあり、選ばれる理由があります。

差別化ができている歯科医院は、以下のポイントを上手く訴求していることが多いです。

  • サービスの質
  • 医院の雰囲気
  • 特化した治療領域

差別化ポイントを見つけるといっても、そう簡単にいかないことの方が多いでしょう。自院のコンセプトや競合の分析から、自院が提供できる独自の価値を地道に見つけ出すしかありません。骨の折れる作業ですが、長期的な経営には不可欠なステップです。

2-3 経営者としての自覚がない

院長が経営者としての自覚を持たずして、経営が上手くいくはずがありません。

本来はプレイヤーである歯科医師も、開業をすれば経営者になります。歯科医院を経営するなら、単に歯科治療を行うだけでなく、ビジネスとして利益を上げなければなりません。

さらに、財務管理やマーケティング戦略の策定など、経営者には医師とは全く別の能力が求められます。成功する歯科医院の経営者は、歯科医師としてだけでなく、ビジネスリーダーとして経営に関する知識とスキルを継続的に磨いています。

歯科医院の開業においては、医療技術の習得と同じくらい、経営者としての自覚と能力の向上が不可欠です。

2-4 事業計画書を作成していない

事業計画書とは医院のビジョンや戦略を明確にし、財務計画や市場分析、リスク管理などを包括的に記載した書類です。事業計画書は融資を受ける際には必須の書類ですが、自己資金で開業する人も作成するべきです。

事業計画書は必要な運転資金や、毎月のキャッシュフローの予測を立てるのに役立ちます。その月の成績が良かったかどうかを判断するのにも使えます。そのため、事業計画書を作らず事業を行うことは、資金管理が甘いと言わざるを得ません。

結果として、収益の不安定化や経営の非効率化を招き、医院の存続を危うくする可能性があります。事業計画書は単なる形式的な文書ではなく、歯科医院の開業と持続的な成功のための基盤です。

3.歯科医院の開業で失敗しないためのポイント

歯科医院の開業で失敗しないためのポイントは、以下の4つです。

  1. 新規患者数を増やす
  2. 自費診療患者の割合を増やす
  3. 開業場所を選定する
  4. 歯科衛生士などのスタッフを確保する

1つずつ詳しく解説します。

3-1 新規患者数を増やす

まずは新規患者を増やさないことには、売上は上がりません。開業後しばらくは、新規患者の獲得に忙殺されることでしょう。

今や立地だけで集客が見込める時代は終わりました。競合がひしめく中、新規患者を獲得するには適切なマーケティング活動が必要です。

歯科医院における代表的な新規患者獲得の施策は、以下の通りです。

  • SNSの発信
  • 看板広告・インターネット広告の出稿
  • 地域のイベントへの参加
  • SEO・MEO対策
  • 予約・会計システムなど患者の利便性を高めるためのシステムの導入

集客活動は一朝一夕で効果が現れるものではないため、効果測定をしながら地道に改善を続ける必要があります。

3-2 自費診療患者の割合を増やす

自費診療患者の割合を増やすことは、歯科医院の収益性を高める重要な戦略です。保険診療に依存するビジネスモデルでは、限られた収益しか見込めません。自由診療は医院の収益性を高めると同時に、患者に高品質な治療オプションを提供できます。

自費診療患者の割合を増やすためには、患者に対して自費診療のメリットを明確に伝えるのが重要です。自費診療は患者にとって大きな負担となるため、自費診療が本当に患者のためであることを理解してもらわなければなりません。

自費診療のハードルを下げるために、分割払いやローンへの対応も検討しましょう。

3-3 開業場所を選定する

歯科医院の開業で失敗しないためには「どこで開業するか」がとても重要です。開業場所を選定するのに、事前にリサーチするべきポイントは以下の通りです。

  • 人口
  • 世帯数
  • 年齢層
  • 競合

事前に決めたコンセプトやターゲット層と、リサーチしたポイントが合致する場所を選びましょう。立地選びを間違えると、それだけで集客の難易度が上がります。立地が全てではありませんが、患者の求める場所に開業することは、集客に大きく寄与します。

また、多くの歯科医院は地域密着のため、いかに地元の人に利用してもらえるかが大切です。「○○といえばこの歯医者さん」というイメージを持ってもらえれば、リピーター獲得につながります。他院との差別化をはかるためにも、開業場所のリサーチは徹底的に行いましょう。

3-4 歯科衛生士などのスタッフを確保する

信頼できる歯科衛生士や歯科助手などのスタッフの確保は、開業の成功に欠かせません。特に歯科衛生士や歯科助手は、医院の運営において重要な役割を担います。患者ケアの質を高め、医院の評判を築くうえで中心的な存在です。

信頼できるスタッフを確保するためには、魅力的な職場環境を用意する必要があります。スタッフが魅力的に感じる職場にするには、以下の項目を意識しましょう。

  • 労働の成果に見合った給与体系
  • キャリアアップの機会
  • 働きやすい労働条件
  • 職場の雰囲気

歯科医院はスタッフの協力なしでは成り立ちません。優秀なスタッフの確保と育成は、患者からの信頼獲得や、医院の長期的な成功につながります。

4.歯科医院の開業に必要な、技術と知識

歯科医院の開業に必要な知識と技術は、以下の5つの要素に分けられます。

  • 治療技術
  • 経営知識
  • マーケティング知識
  • 法律や財務に関する知識
  • マネジメントスキル

特定の技術や知識に特化しているのではなく、5つの要素すべてが必要です。経営者として、医師とは全く異なる能力も求められます。経営を成功させるなら、以下の内容をチェックしましょう。

4-1 治療技術

治療技術の高さは歯科医院の存在意義でもあるため、高度な治療技術の習得と継続的な向上は欠かせません。現代の歯科医療は日々進化しており、新しい治療法や技術が常に登場しています。

歯科医師は最新のトレンドや技術を常に把握し、治療に取り入れることが求められます。最新の治療技術の習得や患者のニーズに合わせた治療プランの提供は、他院との差別化にもつながるでしょう。

治療技術の高さは、歯科医院を開業するための根幹であり、長期的な患者との関係構築と医院の成功に直結します。

4-2 経営知識

歯科医院の開業において、経営知識は治療技術と同じくらい重要です。成功している歯科医院は、治療技術だけでなく、効果的な経営戦略を実行しています。

たとえば、どんなに優れた治療技術があっても、売上とコストが見合っていなければ赤字になってしまいます。また、無計画な増床やコストカットは医院の財務状況を圧迫したり、スタッフや患者からのクレームにも繋がったりするでしょう。

経営は奥が深いため、勉強に終わりはありません。歯科医院を開業するなら、医師としてだけでなく、経営者としても成長する姿勢が求められます。

4-3 マーケティング知識

どれだけ価値の高い治療を提供できたとしても、それを患者に知ってもらえなければ意味がありません。自院の治療を必要としている人に、必要な情報を届けるのがマーケティングです。

競争が激しい歯科医療市場において、効果的なマーケティング戦略は、新規患者の獲得と医院のブランド構築に重要な役割を果たします。

マーケティング面で経営者が身に付けておきたい内容の一例は、以下の通りです。

  • ターゲット市場の選定
  • 患者のニーズと嗜好の理解
  • 集客戦略の策定
  • アフターフォロー

加えて、Webサイトの運営やSNSの活用、オンライン広告などのデジタルマーケティングの知識は欠かせません。また、地域コミュニティへの参加や口コミの促進など、オフラインの施策も同様に重要です。

効果的なマーケティング知識と戦略は、歯科医院が競争の激しい市場のなかで、継続的な成長を遂げるために重要な項目です。

内部リンク:歯科医院 集客

4-4 法律や財務に関する知識

法律や財務に関する知識は、医院の安全な運営のために必要です。専門的な業務は弁護士や税理士、会計士などに任せる場合が多いですが、院長も最低限の知識は持っておきましょう。

知らないうちに、法律に触れる行動を取ってしまうかもしれません。たとえば、インターネット上で自院の宣伝をするときには、医療広告ガイドラインを遵守する必要があります。

医療広告ガイドラインでは、安さの強調や治療効果を誇張・約束する表現は禁止されています。違反すると、広告の中止命令や行政処分などが行われることも3

「知らなかった」では遅いため、院長自身の勉強も欠かせません。

4-5 マネジメントスキル

スタッフを適切に管理できるマネジメントスキルも、歯科医院の開業には不可欠です。歯科医院の経営者として、スタッフを適切に管理し、能力を最大限に引き出すことが求められます。

スタッフを教育し評価、そして必要に応じたフィードバックをすることで、患者の満足度を高められるでしょう。また、チーム内のコミュニケーションを促進し、職場の士気を高めることも重要です。

マネジメントスキルを磨くことで、新規患者数の増加や既存患者のリピートにもつながります。

5.まとめ

歯科医院数は今やコンビニ件数よりも多く、人口減少が進む今後はさらに競争が激しくなります。開業された施設数を廃業した施設数が上回っている現状もあるため、考えもなしに経営していたら明日は我が身かもしれません。

しかし、実際に廃業している歯科医院には特徴があり、戦略的に経営していれば失敗するリスクを大幅に減らせます。

開業を検討している方は歯科技術の向上はもちろん、ビジネスとしての側面もよく考えたうえで計画を実行しましょう。

  1. 厚生労働省「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」 ↩︎
  2. 一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会「JFAコンビニエンスストア統計調査月報 」 ↩︎
  3. 厚生労働省「広告ガイドライン等について」 ↩︎
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